「俺たちは様々だ、全ての点において」

円形のテーブルのまわりには八つの椅子が等間隔に置かれていた
彼が言った通り様々な座り方や態度でいる五人と二つの空席を見て議長は目を伏せる

「だが、それぞれの祈り方で構わないから、今日だけは一人の為に祈ろう」

落ちた沈黙と同じほどに重々しい声でそう呟いて彼は両手を組み合わせた

「俺たちの危機をその身をもって救った英雄に」





Fuckin' Halloween!




カトリック式に
―それは本家であるのだから当然だと議長は思った―
アーメン、と呟いた後にイタリアは小さく呟く

「俺ねー、多分すごい気が合ったんだ」

今日も一緒にお菓子もらってまわろうねって約束してたんだよ、と
付け加える途中で声が曇ってしまう
彼の頭を撫でながら、隣の席の日本も小さく溜め息を吐いた

「とても振り回されましたが、楽しかったですよ」

まだお若かったのに、という痛ましげな呟きにフランスは大きく頷く

「俺さ、あいつがちっちぇ頃から知ってるんだわ」

上を向ききらきらと光る豪勢なシャンデリア
―それは犠牲者が誇っていたものだから今となっては皮肉すぎるきらめきだった―
を見つめているように見える彼の目が潤んでいることを、ロシアは見てとる

「こんなことになるなら、あの時イギリスにボコされてでも俺んちに来させてやれば」

続きを言えずに黙ったフランスを鼻で笑う気には
―今日ばかりは―
なれなくて、彼も口を開いた

「僕は彼に対しては君たちみたいに良い意見じゃないし、シベリア送りにしてあげたかったけど」

言葉を切ると積年の好敵手の笑みが頭に浮かんでしまった
自分の笑顔もイタリアと同じように曇ってしまったかも、と癪に思いながら言葉を放り捨てる

「自分以外の奴にシベリアよりもっと遠いところへ送られるのは、何だか嫌だね」

一気に沈黙が支配したまるで通夜のような円卓を眺めて、
カナダも彼の兄弟の思い出を話そうと口を開く

「僕は、」

その時に、階段を上がってくる足音が聞こえた
扉を背に座っていたドイツは反射的に振り向いて鍵がかかっていることを確認する

一歩、また、一歩
じわりじわりと迫ってくる足音
そしてそれと共に漂って来るのは、屍臭だろうか

まるでこの間見たホラービデオ、とイタリアは
―そのビデオを貸してくれた張本人である―
日本に、悲鳴を上げてしがみつく
その時に、扉の向こうから声が聞こえた

「おい、お前ら中にいるんだろ、わかってるんだからな」

恐怖で鳴ったのは誰の喉だったろうか
イタリアの震えを感じながらも、日本は意を決して声を発する

「アメリカさんはどうなさったんですか」

ああ、アメリカな、と自分たちを救うため出ていった英雄の名前を呟いた口調の上機嫌さにフランスは背筋を凍らせた
勘と本能と隣国歴ン十年の経験の全てが彼に知らせている
これは、やばい

「なんかあまりの美味さに感激してうずくまってる」

沈黙が落ちた
そして、議長は口を開く

「日本、イタリア、バリケードを」



その後は一瞬のようでした、と丁度一瞬にして忘れ去られた
―そして、あろうことかドイツにバリケードに使うための家具として積み上げられかけた―
カナダはのちに語っている
円卓がドアへ滑らされ、椅子が積み上げられていくのを目の端に見ながら
ロシアは無造作に水道管を振り上げた

「僕は帰るね」

窓を叩き割り、着込んだコートに似合わない恐るべき身軽さで
窓枠を蹴ったロシアにフランスは息を呑む
しかしそれが最良、と一歩踏み出しかけた時に後ろから羽交い締めにされてうめいた

「早まるなフランス」

アメリカの次はお前が行くべきだ、と錯乱めいたことを言うドイツから逃れようともがく
あれを誉めた幼い日のアメリカとあれを止めなかったフランスに今日の惨劇の原因がある、と
実に論理的に錯乱している彼に泣き叫ぶ

例の奇跡トリック食糧兵器トリートも勘弁なんだよ」

放せじゃがいも野郎、と身をよじったフランスの目の端に、
開いてしまったドアの隙間が見えた


そして、会議室は悲鳴に満ちる











喉の焼けるような痛さと刻々と強まってくる腹痛に、階段の途中で倒れ伏したアメリカはうめいた

俺が彼を止める、と円卓を叩いて宣言したときは
―日が日だったので問題の人物以外は早く集合し対策を話し合っていた―
ヒーロー気分半分、別にみんなにお菓子なんて作らなくて良いじゃないかといういらいら半分だったから
自分が突撃し全ての問題物を片付けてしまうというのは素晴らしい考えのようだったけれど

甘かったと額を押さえながら荒い息を吐く
愛にだって不可能はある、なんて加害者が聞いたら真っ赤になりそうなことを思いながら
階上から聞こえる様々な悲鳴にかたく目をつむる

それから、彼は苦笑いして呟いた




Have a nice Fuckin' Halloween party!





















(了)

生まれて初めてホラーを書きましたが、とても楽しかったです!
これは、米英です。ごめんなさい
(M)

++++++++++++++++++++++

あれいきなり感染性ゾンビ系?もしくは吸血鬼系?
世界に蔓延したウイルスに侵され暴走する英を決死の覚悟で救出かヒーロー!?
と、おもいきや。
これはほんとMにしかできない仕事です、G☆8総出演の上この構成、この落ち。
そうですよね、愛にだって不可能はあるよな!(大笑い)
悪夢の日を見事に演出してくれた彼女に完敗、いえ、乾杯!
(たずな)


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