その日もシャツを着た
イギリスが文句を言うように、わざとボタンを二つ開けて
eat you !
肩が凝って首を倒せば小気味良い音がした
それに浸る前に、目の前のひとが反射的に目を逸らしたのを見る
「兄さん」
一度しか呼んだことの無い呼び方をすれば、
既に赤かった顔は可哀想なほど真っ赤になった
目を伏せた表情に苛立ちと、更にそれと違うものを覚えてしまうのは
もうすぐ満月が来るからだろうか
「最近俺をその目で見るよね」
何の言いがかりだよ、と言った声も力無い
それでも目を逸らしたままで自分の部屋へ帰ろうとする彼の
ぞっとするくらい細い手首を掴んだ
振り払おうとする力は信じられないくらい強い
目が合って、はなせ、と言われる前に頭を押さえる
勢い良く口付けたせいで口の中のどこかが切れた
痛いけれどそれをイギリスの抵抗とまとめて無視して口の中をなぞる
尖った犬歯に舌が触れた瞬間に、怯えたように彼の抵抗が強くなった
そのまま強く舌を押し付けると血の味が口いっぱいに広がる
驚いたように見開いたままだった緑の目が閉じられた
それから、今度は自分が目を見開く羽目になる
引き剥がそうとしていた手の力は弱くなって、
信じられなかったけれど彼の方からキスが強くなった
口の中を舌が這うのと一緒に小さく吸われる
その度に鳴る音は子猫がミルクを舐めるのに似ていたけれど、
あんなに純粋な光景とは真反対だ
目を閉じて一心不乱に貪ってくる目の前のひとにくらりとして小さく息を吐く
途端に彼は我に返ったように自分を突き飛ばした
上がった息でこちらを怯えたように見ている彼は、
もう先ほど自分を動揺させたような恍惚とした表情ではない
ひたすらに泣きそうなその顔に、困ったように笑いながら首を傾げる
「言ってくれれば良かったのに」
自分の言葉に、目が見開かれる
彼の口から少し滴っていたのは先ほどの自分の血だ
扇情的かもなんて暢気なことを考えながら拭ってやると
顔を見せないようにと彼は顔を背ける
その顔を両手で掴んで真正面から見つめれば涙が際限無く零れていった
それを見てさっきまでのことが嘘だった気がする
こんな泣き虫の吸血鬼なんて、本当にいるんだろうか
しゃくりあげる彼にどうしていいかわからなくてその手を取る
尖った爪を自分の首元に押し付ければ鈍い痛みと液体の感触が溢れ出した
「いくらでもあげるよ」
伏せていた目を見開いてイギリスは手を引いた
止血するように首筋を舐めて
―彼の本性からすればそれはきっと酷い我慢を伴うことなんだろう―
口から出た言葉は震えていた
「それが怖くて言えなかったんだ」
俺くらいになると飲まなくても生きていける、と言った彼が
―本来の―
食事をする姿を確かに見たことはない
知っているのは自分の為に不味い食事を作る姿
台所に立つ彼の背が変わらないことに気付いたのはいつだったろうか
「お前を拾ったのはそのためじゃない」
アメリカは小さく息を呑む
また迫害されるのだろうと虚ろな目で彼を見た日を思い出した
さしのべられた手に戸惑って、それでも冷たい雨の中で取った掌は温かかった
例えその爪が人間ではないほどにとがっていたとしても
彼の回想を振り切るようにイギリスはあの日と変わらない顔で困ったように眉を寄せる
「ただ、お前だから、」
たまらなくなって抱き締める
いつの間にか自分の腕の中に丁度良くなった彼に満足して、
その金髪を撫でながら自分の首元へ近づける
「いつかは一滴残さず頼むよ」
抱き寄せた自分を押し返して、至近距離で真ん丸になっている緑の目に
彼がよくするように口の端を上げて笑いかける
「俺も、骨までまるごと食べてあげる」
それは本当に殺し文句だな、と照れ隠すように笑った鼻先を
優しくかじってやった
***
狼男アメリカ×吸血鬼イギリスっていいなと開眼させられ
たずにゃんの絵にそうようにエロを書こうとしたのに
やっぱり私はチキンでヘタレ野郎でした
だけど狼男アメリカ×吸血鬼イギリスだけは全力で主張したいです
万歳!
(M)
***
・・・!!!
あの絵からこんな、海老で鯛を釣る現象が起こるとは誰も思うまい、
な に こ れ!!
私情で申し訳ないですが、献身(まさにな!)とか我慢(萌えるな!)とかって要素に滅法弱い人間にこの小説はもう、最高でした
せつなさに泣きそうになりました、こんなハロウィン・・・あったんだ・・・☆
M、ほんとにありがとう、ございましたー!
(たずな)